◆She Said She Said 制作記◆
今回はかなり、ややこしいお話です...(笑)                  Download

 Teraから送られて来たサプライズ・データ。このサプライズと銘打ってドラムだけのオケを送って来る事がたまにあるのですが、何のヒントもないとこれが結構解らなかったりするんです(笑) 今回のは『途中で3拍子になる曲です』という注釈があったので「恋を抱きしめよう」とか「Happiness Is A Warm Gun」かなと思いきや、この「She said She Said」でした。ビートルズがアイドルを演じながらツアーを廻っている頃、裏ではというかスタジオでは既にこういった曲が完成していたというのは興味深い事実ですね。
この曲を収録した"REVOLVER"は正確には8月5日に発売されています。ということは、この少し前7月初旬の日本公演の時には収録が完全に終わっていたという事になります。世界的なアイドルとして叫声を浴びる中でツアーを消化している時、すでに彼らは次のステップへと脱皮していたというか変態していたというか...やはり彼らの溢れる出る才能は止まる処を知らなかったようです。
"RUBBER SOUL"からさらに進化した実験的音楽。マニアックなファンにウケのいいアルバムは、こういった一筋縄では行かない楽曲にその真意があるのかも知れません。
                                                  

さて、制作にあたっての裏話ですが、今回の目玉は何と言っても"回転操作"でした。最初、オリジナルと同じテンポに刻まれたドラム・データを元にギター入れをしようとした時、「まてよ?」と思ったんです。オリジナルのキーはB♭(Tera曰く、厳密に言うとB♭に半音の22/100アップ)でも、あのジョンのアルペジオの弾き廻しを聞く限りB♭でプレイしている筈はなく1フレットにカポをしてキーAで弾いているのだろうと踏んだんです。しかし、声を聴くと完全に回転操作で無理矢理上げられた音声になってます。
という事は元々キーAでプレイした曲をミックス後のマスタリングで回転を上げて行ったらB♭+αになったというのが自然な仮定です。
多分そうだろうとという事で、ビートルズと同じようにAのキーで全て録音してからB♭+αに上げることにしました。Teraはドラムの打ち込み速度をキーA用に再度作り替えました。その時に同時にオリジナルをAに戻したデータも送られて来たので聞いてみましたが、ジョンの声は聞きやすい一般的なジョンの声のように思いました。それでそのキーA用のドラムを元にオケを録音し、歌録りをしてキーAバージョンを制作、それを元にミキシングを施してB♭+αに上げたキーB♭バージョンのラフ・ミックスを作ったのですが、この時、違和感を覚えたのは私の声でした。
回転を上げた為に声がトッポジージョ化してしまっていたのです(笑) トッポジージョなんて言っても若い方は知りませんよね。そう、カワイイ感じの声になってしまったと言えば解るでしょうか。半音+αでは音階の幅があり過ぎてトッポジージョになってしまう...という事はピッチの上げ幅がもっと少なかったのではと考えられます。となると、ひょっとしたらジョンはやはりカポをしてAでプレイ、キーはB♭で演奏したのではないのだろうか?オリジナルAの声が自然なジョンの声だと思っていたのは間違いで、実はB♭で歌ったんじゃないのか?という疑問が沸いて来たのです。
そう言えばあのオリジナルAのテンポって不自然なくらいに遅すぎます。ビートルズがこれで良しとしてプレイしたテンポとは考えにくい...色々と考えた結果、B♭でプレイして歌い、それをある程度回転を上げた結果がB♭+22セントだったのではないかとのことで、今度はB♭のオケにして歌とコーラスを録り直しました。それを22セント回転を上げてミックスしたのが最終のものとなりました(^_^;)
いつもTeraが言う「ビートルズ・コピーは考古学であり、我々は考古学者だ」と言う意味がしみじみ解って参りました。このような事は、もしジョンが生きていたとしても正確な手法は100%解らないでしょう。でも、そこを想像力で掘り下げて行く処に完全コピーの醍醐味があるのかも知れません。

・イメージ1  最終オリジナル=キーA録音→回転操作→(B♭+22%) その差1.22
・イメージ2  最終オリジナル=キーB♭録音→回転操作→(B♭+22%) その差0.22

                                                   2007,12,23 

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