■建設省告示(昭和54年)第1206号の解説■

建築士事務所の業務報酬の算定基準は、建築士法という法律に基づいて(同法第25条)
         建設省告示(昭和54年)第1206号で次の様に定められていますは、以下に簡単にご説明申し上げます。


業務報酬=直接人件費+経費+技術料+特別経費+消費税に相当する額

しかし契約時点で実際にかかる経費を前もって計算するのは、不可能といってもいいでしょう。

そこで略算方法によって業務報酬を計算することとなります。

【略算による算定方式】(Man・Day方式)





直接人件費 経費 技術料 特別経費 消費税
(直接人件費と同額) の0〜50%
の間で調整
その業務の従事者の 直接経費 間接経費 その業務に係る その業務に係る 取引に係る
給与
賞与
諸手当
退職金
法定保険料

など
印刷製本費

複写費

交通費

など
事務所管理・
運営人件費
研究・調査費
研修費
減価消却費
通信費
消耗品費
賠償保険料
書籍費
など
技術力

創造力

など
出張旅費

特許使用料

など
消費税額

以上の様に経費は、直接人件費と同額となっています。

技術料については、その難易度によって直接人件費の0〜50%の間で調節する事となっています。

特別経費については無い場合がほとんどですが、遠方の現場などである程度予測がたつ場合、

想定計算して計上し後日清算、その都度請求、もしくは全て後日請求となります。

すなわち、直接人件費がこの計算式のもとになっています。

それでは、その直接人件費の割り出し方法は、

直接人件費=(業務人・日数)×日額となります。

業務人・日数とは、1級建築士経験3年未満、もしくは2級建築士経験8年未満の者が、

設計又は工事監理等を行うために必要な人・日数で、下表より選択します。

【標準業務人・日数表 】
建築物の用途 第1類 第2類 第3類 第4類
工場・車庫

市場・倉庫

など
体育館・観覧場
学校・研究所
官舎・事務所
駅舎・店舗
百貨店・共同住宅
寄宿舎・など
その他1類の
複雑なもの
銀行・美術館
博物館・図書館
公会堂・劇場
映画館・集会場
ホテル・旅館
ナイトクラブ・病院
料理店・放送局
複合建物・など
その他1・2類の
複雑なもの
T U
戸建住宅
(一般的な木造
戸建住宅を除く)

鉄筋コンクリート造
鉄骨造
木造3階建など
その他複雑な住宅
一般的な
木造戸建住宅

(専用住宅で
2階建程度
のもの)
工事費
(消費税抜き)















1000万円 21 11 32 23 13 36 25 14 39 23 11 34 13 20
1500万円 28 15 43 31 17 48 35 18 53 32 16 48 18 27
2000万円 35 19 54 39 21 60 43 23 66 42 21 63 23 11 34
3000万円 48 25 73 53 27 80 59 30 89 59 30 89 31 15 46
4000万円 60 30 90 66 34 100 73 37 110 78 39 117 38 19 57
5000万円 71 36 107 79 39 118 87 43 130 95 47 142 45 23 68
6000万円 82 41 123 91 45 136 100 49 149 111 56 167 52 26 78
7000万円 92 45 137 102 50 152 112 55 167 128 64 192 58 29 87
8000万円 102 50 152 113 55 168 125 61 186 144 72 216 64 32 96
9000万円 111 54 165 124 60 184 136 66 202 160 80 240 70 35 105
10000万円 121 58 179 134 65 199 148 71 219 176 88 264 76 38 114
20000万円 205 96 301 228 106 334 251 117 368 325 163 488
30000万円 280 128 408 311 142 453 343 156 499 467 234 701

あとは日額ですが、この方式では建築技術者をA〜Fランクまで区分分けしていて、

このうちE ランクの日額を採用します。

【業務経験年数等による技術者区分モデル】
建築士等の資格・業務経験等による区分 業務能力の換算率 10年度日額(基準)
1級建築士18年以上・2級建築士23年以上の業務 経験
及び、大学卒業後23年以上相当の能力のある者
1.83 57,828 円
1級建築士13年以上・2級建築士18年以上の業務 経験
及び、大学卒業後18年以上相当の能力のある者
1.80 56,880 円
1級建築士8年以上・2級建築士13年以上の業務経験 
及び、大学卒業後13年以上相当の能力のある者
1.56 49,296 円
1級建築士3年以上・2級建築士8年以上の業務経験  
及び、大学卒業後8年以上相当の能力のある者 
1.23 38,868 円
1級建築士3年未満・2級建築士5年以上の業務経験  
及び、大学卒業後5年以上相当の能力のある者 
1.00 31,600 円
上記に該当しない者 0.69 21,804 円

この表の日額は、人件費年額を年間稼動日数で除した額です。

又ここでいう年間稼動日数とは、170日〜200日です。

(1年365日−一般休日数−有給休暇20日−技術研修、情報収集、社会活動等にようする日数)



この様に非常に難解な算定式ですので、試しに一度計算してみましょう。

参考例
工事費(消費税抜き)が3000万円の一般的な木造戸建専用住宅を
建設場所近隣で設計及び工事監理した場合の設計業務報酬額は?
@ まず業務人・日数は、第4類のUで工事費3000万円のところを見ると 46 (人・日数)
A 次に直接人件費は、上記より 31,600×46 となって   1,453,600円
B そして総経費は、直接人件費に同じですから           × 2
C 技術料は、一般戸建住宅程度では、25%ぐらいですので   × 0.25
D 特別経費は、この場合かかりません
E これをMan・Day方式にあてはめると
     1,453,600 × 2.25 = 3,270,600 (消費税抜き)
F 設計業務報酬額は、3,270,600 円 + 消費税相当額となります

こうしてみるといったい設計料は工事費用の何%でしょうか?

327 ÷ 3000 = 約 0.109 つまり工事費用の10.9%という事になります

同様に一般木造以外の住宅、工事費4000万円で計算すると(技術料35%)

設計監理業務報酬は、8,688,420 円という事になってしまいます

これは工事費用の21.7%とあまりにも高くなりすぎます

ただし、この計算方法は、あくまで法律で定められた金額の目安です

工事費用が高いほうが割安になります






All copy right YARD Yoshimura arch office reserved