■土地の購入には充分なご注意を!

土地を買ったまでは良かったのですが、いざ建物を建てようとしたところ、
大問題が発生!裁判沙汰にまで進展か?


元々ひとつだった土地が売却されたのですが、少し大きすぎて売りにくいので、不動産業者が二つに分筆して販売した土地でした。右側の土地は既存の地下車庫と外部階段があったので、お客がすぐに付いたのでしょう、既に売却されていました。
周りの環境も良く、静かで交通の便も悪くないという事で施主さんは購入を決意された訳です。
ただ、既設の石積みが道路面より2.5m程あるので、敷地に上がる為には、階段が必要になって来ます。

そこで、既存の石積みの中間部分を切り取り、そこに地下車庫とアプローチ階段を挿入して、石積みをコンクリートの擁壁で繋ぐという計画にしました。
この地域は宅地造成等規制法の指定区域であり、この場合2m以上の切り土という事で、当然、宅造法の許可が必要になります。
建物の確認申請を提出する以前に、この宅造許可を受け、宅地を造成しなければなりません。
ただし、確認申請はその宅造許可の表書きの書面を添付すれば受けられます。

色々な難題を抱えながらも、宅造許可申請が受け付けられ、審査が進行して行きましたが、最終に審査担当者から告げられた言葉は驚くばかりでした。
敷地の上部の隣地の石積み擁壁の上にあるコンクリートブロック塀が問題であるという所見でした。ただの塀なら良いのですが、その塀を利用してさらに盛土がなされていて、安全とは言えないので土木事務所としては宅地造成許可は下ろす事は出来るが、宅地造成等規制法第16条第2項の規定により、隣地のコンクリートブロックに接している土を除去しなければ、完了検査済証を発行出来ないという事でした。
 そこで、仲介した不動産業者と施主、施工業者を交えて二度に渡る対策会議を行いました。施主としては購入した土地の資産価値が下がる事について我慢出来る筈がありません。不動産業者に言うしかなく、宅地造成許可の完了検査済証及び、建物の完了検査済証を取得出来ないのであるならば、この土地を返却して損害賠償を起こすのも辞さないという事になりました。
これにあわてたのは勿論、寝耳に水の不動産業者です。自分達の調査不足とはいえ、もしそのようになれば大変な事になります。自社だけでなく、その土地を買収した不動産業者、売り主、問題の隣地の家主にまで及び、また、それをさらに何年も掛かって裁判で争わなければならなくなります。
どう考えても誰も得をしないのは解りきった事で、得をするのは弁護士くらいな物です。
                               ★
 宅地造成等規制法第16条に「改善命令」という項目があり、問題の隣地に対してこの「改善命令」を発令してくれないかと再度土木事務所に行ったところ、「改善命令」を発する事は出来るが、発令した場合はこの問題が完全に解決出来ないと、宅造完了検査済証はおろか宅地造成許可さえ下ろせなくなると言う脅迫めいた言葉が返って来ました。また、「改善命令」を発令する場合、逆にそのブロック塀が何故危険であるのかという証明をしなくてはならないなどと言います。
「安全とは言えない」と言ったのはあなた達でしょうが?「改善命令」を出してくれとなると「危険と言える証明」が必要だと矛盾した事を言います。私はあきれてしまいました。
要は口には出しませんが、特定行政庁としては民民の問題には介入したくなく、民民の問題は民民で解決してくれと言うニュアンスです。法に記載されているのだから言いようがない、仕方ないと言った体で、本当にひとごとのような、いかにも「お役所らしい」言い方をします。
                               ★
 こうなれば最後の手段しかありません。隣地に赴き、事情を一から説明してブロック塀に接している土を撤去して貰うしか手だてはありません。当然、責任のある不動産業者が隣地の交渉に当たる事になりましたが、私にも法のアドバイザーとして同行して欲しいと言うので一緒に説明に上がりました。
隣地の家主はかなりインテリジェンスの高い50歳代の紳士で、とりあえず話を理解してくれました。一週間の後、土を取り除く事を承諾して頂き、この工事費については不動産業者が責任を取って負担する事でなんとか決着を迎えた訳です。
もし、これが「お前とこの土地はお前の土地、うちの土地はうちの土地、放っておいてくれ」と耳を貸さない隣人であったならどうなったでしょう?考えただけで寒気がします。逆に考えると、この土地を購入した施主はもめ事にはなったものの、まだ「ツイてた」という事です。本来、このようにすんなりと納まるのは希なケースだったと思います。

自分の落ち度ではなく、他人がなした違法行為によって土地の資産価値が下がるなどとは、どう考えても理不尽な話だと思いますし、このようなあやふやな法の記載は必要ないとも思います。
                       
                        宅地造成等規制法の詳細はこちら



All copy right YARD Yoshimura arch office reserved