Words-001-2  BEATLESたり得るモノ、それは狂っていること /真一郎さん

 ビートルズがビートルズたり得た理由が100項目ぐらいあるとしたら、言葉の使い方が正確ではないかもしれませんが、彼らが『狂っていること』もその一つだと思います。
当然、彼らの人を食ったような、人を煙に巻くような『ユーモア(ダジャレ)』もその項目の一つだと思いますが、この『狂っていること』とそれとは紙一重ですね――っていうか表裏一体? でもこれが私たちを熱狂させてしまう訳です。

だいたい、「お前は俺の名前を知っているだろう」ってずっと歌い続けてる唄も変だし、
「お前の足が、息が、歯が臭い! a mile awayから匂うぜ!」って歌うポールもかなりイッテルとしか言い様がありません。でも、彼らのこの狂い方が――このおバカな唄の数々が、私たちを、日々のストレスから解放してくれる精神安定剤になっていることも確かですし、極論すれば、仕事への賦活剤(カンフル剤)になっていることも事実です。
この一種のパラドックスの存在が、私たちを熱狂させてしまう訳ですね。


別の言い方をすれば、ジョンは「ヤー・ブルース」で、朝に死にたい、夜に死にたい、いやもう俺は殆ど死んでいるのかもしれないというペシミスティックな、それでいてロック史上最強の、前人未到(Where No One Has Gone Before)のブルースを歌いましたが、でもその次の曲はポールの歌で、ジョン・デンバーですらカバーした「母なる自然の息子」という大変美しい“フォーク・ソング”でした。
この言わば二律背反するものを一つの鍋の中で煮込んでしまうというか、この左翼も右翼も取り混ぜた、渾然一体とした−−そのパラダイム(と言うかパフォーマンス)の広さ、深さ、その奥行感が、私たちを熱狂させてしまう訳です。

ビートルズとは、既に何ものかによって破戒されたモノの「跡or後」に何かを創造した訳ではなく、またゼロ(無)から何かを生み出した訳でもなく、破戒することが同時に創造行為であるような稀に見る貴重な<啓示的>な存在でした。それは尋常ではない狂い方の内に在って、初めて成就された奇跡的なものだったのかもしれません。
ですから、私たちの中で最もビートルズ的な何ものかに近いところにいるコマンチャさんやCutsさんたちには、もっともっと「狂って(乃至は実験的で)」いただきたいと思います。
ところで、項目のNo、1は、私見によれば、彼らが『イケメンだったこと』だと思います。
いい男だなぁ〜、あいつらって・・・。                          2005,05,07