The Words 007-2 「僕だけではないと思う...」 コマンチャさん 

 Cutsさんのお話しにもありましたが、それまでにあったソノ・シートなどをかけたレコード・プレイヤー(蓄音機)やテープ・レコーダーと言った音の再生機材そのものがモノラルであった時代から高度成長期を迎え、一気にステレオ化となって行った時代にビートルズに夢中になっていた青春時代があったのですが。
70年代初頭から買い揃えたレコードですが、その当時はステレオ・ミックスで販売されていて、そのビートルズ・サウンドに慣れ親しんでおりました。皆さんご存知の様に初期のミックスは右にボーカル、左にオケと言った、強引なミックスを施されているのですが、それはそれでステレオと言う一種魔法的に思えたLとRから別の音が聴こえると言う「臨場感」に心躍らされていたのでしょう。

60年代のレコードに耳を傾けてみると、ビートルズの音源はその中でも良質であると確信しております。
中でも(写真・上)「A HARD DAYS NIGHT」のLPはその当時にしてキラビヤカな音です。高音質ステレオ・サウンドで輪郭のはっきりした迫力ある音だと思います。それまでの「ステレオこれがビートルズvol.1,vol2」や「FOR SALL」も悪くはないですが、「A HARD DAYS NIGHT」の音質は群を抜いておりました。
世の中の再生システムがステレオ化して行く中で、APPLEもやむなくステレオ盤を発売したんのではと今更思うのですが、何かの書で読んだのですが、ジョージ・マーティン曰く「初期の音源は断然モノラルがいい」と書いてありました。
とって付けたステレオ・ミックスであるのを嫌ったのかもしれませんし、確かにモノラルの方が音圧にすぐれているのかもしれません。さりとて慣れ親しんだそのステレオ・ミックスや先に述べました「A HARD DAYS NIGHT」の音質の良さは譲れません。
 ODEONから発売された当初はモノラルだったと思いますが、アメリカでの発売に
 向け,発売元のCAPITOLの要請を受けステレオ・ミックス、おまけにフィル・スペク
 ターによって深いリバーブ処理がされると言う形でビートルズ・セカンドがアメリカ
 で発売されましたが(写真・左)、この辺りあっさり要望を飲んだのか疑問は残り
 ますが、このCAPITOL編集、選曲もイギリス盤とは異なる自由気ままな編集。
 しかし「ROLL OVER BEETHOVEN 」 「SHE`S A WOMAN」などの少しハードぎみ
 な曲では、そのステレオ感プラス、ライブ的な臨場感の大迫力サウンドとして耳
 にする事が出来ます。
いよいよ世の中はデジタル化の方向へ。
待ちに待ったビートルズがCDで聴けるとあって、興奮は高まるばかりでした。
「何これ・・・」モノラル・ミックスの上、そのCDの薄べたな、かつ温もりのない音にがっかりしてしまいました。おまけに別のテイクに差し替えられています。
「PLEASE PLEASE ME」はジョージがミスをして、そのミスを聴いたジョンが笑っている2コーラス目の唄い出しと違うテイク。「IF I FILL」の唄い出しのジョンのダブル・トラックはシングルに摩り替えられている。PAST MASTERSの中の「I CALL YOUR NAME」イントロのギターがテイク違い。「THANK YOU GIRL」は間奏のハーモニカが取り去られている等。
近年「LET IT BE NAKED」の発売でポールがこうあるはずだと主張するアルバム「LET IT BE」を耳にする事は出来たのですが、やはり青春時代に慣れ親しんだその音、その編曲、そのミックスから離れられないのは僕だけでは無いと思うのですが・・・。


※最上写真は最もお気に入りの音のアナログ日本盤「A HARD DAYS NIGHT」のジャケットとUSキャピトル・クラブのユナイッテド・レコードからリリースされたステレオ・ミックス「A HARD DAYS NIGHT」ジョージ・マーティン・オーケストラによる劇中BGMも収録されています。(コマンチャ地下の資料室より)